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No.440 読書バリアフリー法セミナー

2013年6月、国連の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)は「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のあるものが発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」を採択。

日本でも条約の批准に向け、国会で著作権法改正案の審議が始まろうとしています。

日盲連、DPI日本会議、全国盲ろう者協会、そして弱視者問題研究会の4団体は、マラケシュ条約批准時に著作権法を改正するだけではなく、読書障害者の読書環境を総合的に整備するための「読書バリアフリー法」の制定を求めて運動しています。

私たち音ボラネットとしても、著作権法改正に向けては、文化庁への陳情、パブリックコメントの提出等を行ってきました。
ですので、日本盲人福祉センターで開かれたセミナーには、多大な関心を持って参加しました。

弱視者問題研究会の宇野和博先生からは、「マラケシュ条約と著作権法、読書バリアフリー法」について。

枚方市立中央図書館の服部敦司さんは、「視覚障害者の立場から読書バリアフリー法に期待すること」を話されました。

宇野先生が音訳ボランティアの高齢化等にふれ、テキスト作成ボランティアを提案。

「プレーンテキストを作る。きれいなテキストデータをベースにしてさまざまな媒体を保証していかなければならない」と。とても興味深く伺いました。

また「サピエ図書館」と「国立国会図書館」の話も。

データが二元的に管理されているより、一元化されたほうがいいにきまっています。が、これがなかなか難しい。

大学図書館、学校図書館、公共図書館、点字図書館、更には社協や地域ボランティアの製作したものが、国会図書館の下に集められることが理想だと思うのです。

ところで、NPO法人自立生活センター「くれぱす」の見方信子さんの意見発表に、当事者の声が何より、人の心を動かすと感じました。この方は、「耳と目はOK。口も動かせるので話せる。でも身体障害なので24時間介護が必要。手が動かないのでページをめくれない。めくってとか、次のページとか介護者に言うのは違和感があり、気を使うのに疲れた。電子化されたものは読めるようになったが、ノベルや最新本などは読めない。時間差でしか読めない。健常者や晴眼者と同じタイミングでというのは難しい。自分の読みたい時に読めることが大事」と。

全国盲ろう者協会の川島朋亮さんからは、「全く見えない、全く聞こえない全盲ろう者は点字が使える。でも点字離れが増えている。しかし、点字が必要な人もいて、一人ひとりのコミュニケーション方法が違っている」と。

全ての障害者がいつでも読みたい本を自分にあった媒体で買ったり、借りられるようになることを目指し、「読書バリアフリー法」の制定を求めていかなければなりません。

もちろん出版社にも合理的配慮を求めながら、関係する全ての団体、個人が協力、連携をしなければなりません。

私たちも音訳だけに専念していればいい、という時代ではないのではと思います。

CD-R いりませんか~。

音訳グループ 我孫子の関口さんからの情報です。

都内の企業で今月末で処分されるCD-Rが1500枚あります。
送料のみでご提供してくださるようです。

パナソニック製で録音図書用に使用できることは確認済みです。
ただ、おもて面がレーベルプリントができない、光沢のもので、
社名が印刷されています。

梱包の都合で300枚単位でヤマト運輸利用の着払いの発送になります。(参考:都内⇒都内 1,123円)

上記の条件でご希望の方、
至急事務局 info@onyaku.net までお知らせください。
29日(木)午後11時まで受け付けます。
お問い合わせも事務局までどうぞ。

 

No.439 テキスト化プロジェクトただ今大繁盛

あの糸野海生くんがみごとICUの大学院への進学を勝ち取りました。

卒業論文が優秀賞に選ばれ、卒論謝辞に音ボラネットテキスト化プロジェクトの名前をあげてくれました。嬉しいですね。

また、産業カウンセラー認定試験に合格したAさんです。
所属する団体の勉強会で、合格体験を話してほしいと言われたそうです。
音ボラネットの名前を出して、支援の内容(問題集のテキスト化)を発表したいがさしつかえないかと、ご本人から問い合わせがありました。

更には、近代文学研究者として新刊本の書評を書いたり、多くの著作があるBさんは、仕上がりの早さに、いつも驚かれています。

この他にも、社会労務士の資格試験受験希望のDさん。
地元の図書館に10冊以上の問題集等のテキスト化を依頼していたものの、時間がかかりすぎることへの不安で、図書館経由で当会に回ってきました。

このように、とぎれることのない依頼が続いています。

音訳以上に「早くなければ情報ではない」分野のテキスト化ですから、更なるスピードが要求されます。
全国のテキスト化プロジェクトのメンバーの頑張りがあればこそです。

そして、この活動が成り立っているのには、もう一つ忘れてはならないことがあります。
企業の協力・支援です。

まず、(株)高知システムさんからは、PCーTalkerをはじめとして、MyBookⅢなどのソフトウェアを提供していただいています。

作業中の目の校正だけでは、どうしても見落とすところかあります。より精度の高いデータを提供するために、画面読み上げソフトを使って耳での校正も時には必要になってきます。

続いて、このプロジェクトが始動した当初から協力して下さっているのが(株)ブックスキャンさんです。
原本をスキャンしてPDFに変換する部分で「100冊までは、無償で」と約束して下さっていました。このたび、その100冊を超えてしまいました。

でも、「今後も冊数に制限なく、協力させていただきます」という申し出がありました。

私たちのような弱小ボランティア団体にとって、高知システムさんやブックスキャンさんのような企業からの支援は、ほんとうにありがたく励みになります。

改めてのお礼を申し上げます。
今後もよろしくお願いいたします。

No.438 演奏会

前後して和と洋の演奏を聞きました。

和の方は世田谷区松原のブローダーハウスでの「ごぜ唄が聞こえる2018」です。
新潟市在住の萱森直子さんが毎年同じ場所、同じ時期に行っているものです。

今回は「石堂丸」がメイン。瞽女歌には抑揚がありません。わからない言葉もでてきますが、いつの間にか語られる物語の中に、自分自身がいるような錯覚にとらわれます。

我が故郷、旧黒川村の特別養護盲老人ホーム「胎内やすらぎの家」で晩年を過ごされた小林ハルさんに惹かれ、そのハルさんから直に伝えられた瞽女歌を歌う(萱森さんは、師匠は歌うとは言わなかった。読むんだと言われてましたと)萱森さんの演奏をまた聞いてみたいと思うのでしょうか。

三味線を抱え、農・山村を巡る盲目の女旅芸人に、視覚障害者の自立の原点を見るような思いがします。

このごぜの姿を後世に伝えるべく、小林ハルさんをモデルにした映画「瞽女」の製作が進められています。公開は2020年。

監督の瀧澤正治さんともお目にかかり、音ボラネットも協力団体として、名を連ねています。

みなさん!一緒に応援しましょう。

さて、翌日には、国際基督教大学(ICU)のチャペルでのパイプオルガンの演奏を聞きました。

ICUと言えば、音訳やテキスト化を通し、応援している、我らが糸野海生くんです。
「2017年度オルガン講座修了コンサート」に出場です。

最後の二人の女性は、プロを目指しているとかで、聞き応えのある演奏でしたが、海生くんも負けてはいません。
ヨハン・セバスチャン・バッハの曲を聞かせてくれました。

プログラムには、「音楽を聴かないで下さい。絵を描くようにオルガンを奏でます。耳を澄まして見てください」とありました。海生くんらしい表現だと思いました。

ところで、いつもチャペルのオルガンの大きさに圧倒されます。音が天上から降り、地から沸き上がってきます。音の厚みという一点をとらえても、この楽器は独特です。日本人の体型には、向かないのではと感じるところもあります。

ある演奏者が「自分自身がオルガンに飲み込まれてしまう恐怖を感じることもありました」と書いていましたが、何となくわかる気がします。

この海生くんも今年、ICUを卒業し、無事大学院に進むことになりました。本当におめでとうございます。

ハンディもあり、あの細い身体でどれだけ神経をすり減らし、頑張ってきたことでしょう。

「十分頑張っているのだから、たまには、はめをはずしてもいいのよ」という私に「いやあ、えへへ」と応える海生くんです。

音ボラネットの海生くんファンのおばさんたちの声でもありますよ。これからも、みんなで応援しています。

さて、高知の藤原さんのお嬢さんが青山学院大学に合格したそうです。
10周年記念総会の懇親会にお父さんを迎えにきた彼女を海生くんに紹介したことを思い出しました。

若者の頑張りに勇気をもらいました。ありがとうございました。
これからの人生にも幸あれ、と祈ります。

「読書バリアフリー法」セミナー開催のお知らせ

読書バリアフリー法セミナー開催のお知らせ

日時:2018年3月10日(土) 13:30~16:00

場所:日本盲人福祉センター(日本盲人会連合)

〒169-8664 東京都新宿区西早稲田2-18-2

電話:03-3200-0011(代表)

主催:日本盲人会連合  DPI日本会議  全国盲ろう者協会  弱視者問題研究会

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プログラム:

13:00 受付開始

13:30~13:40 開会、主催者挨拶

13:40~14:20 基調報告「マラケシュ条約と著作権法、読書バリアフリー法」

弱視者問題研究会 宇野和博

14:20~14:50 講演「視覚障害者の立場から読書バリアフリー法に期待すること」

枚方市立中央図書館 服部敦司氏

(10分間 休憩)

15:00~15:20 意見発表 NPO自立生活センター「くれぱす」事務局長 見形信子氏

15:20~15:50 質疑応答・フリーディスカッション

15:50~16:00 閉会

参加費: 無料

お問い合わせ・申し込み先

全国盲ろう者協会

下記事項をご記入の上、メールでお申し込みください。

申し込みメールアドレス:info@jdba.or.jp

(記載事項)

1.氏名・ふりがな
2.電話番号
3.メールアドレス

* 以下は該当する場合のみご記入下さい。

4.資料種別:点字(当日配布、電子データ(事前送付)
5.情報保障:手話通訳・パソコン要約筆記
※ 盲ろう者で、パソコン要約筆記を手元のパソコンでご覧になる場合は、その旨申し込み時に記載願います。なお、パソコン・LANケーブルをご持参ください。

※会場は座席のみとなります。通訳方法の関係で、机が必要な場合もお申し出ください。

6.同行者の有無・人数
7.車椅子スペース
8.駅での待ち合わせ:高田馬場駅早稲田口(12:45)、西早稲田駅1番出口(13:00)

尚、定員80名となり次第、締切とさせていただきます。

 

受賞記念会と講演会のご案内

第11回塙保己一賞奨励賞受賞の澤村裕司さんと第12回愛盲報恩会片岡好亀賞受賞の川島昭恵さんの受賞記念会が行われます。

日時:2018年3月3日(土) 13時~14時30分(開場は30分前)

会場:日本点字図書館3階

参加費(記念品代)一人 1千円

受賞者
・第11回 塙保己一奨励賞の澤村 裕司さん
・第12回 愛盲報恩会片岡好亀賞受賞の川島昭恵さん

内容:澤村さんの筝
川村さんのお話

講演会のお知らせ
日時:3月3日(土) 15時~16時30(開場は30分前)
会場:日本点字図書館
講師:筑波技術大学教授 藤井亮輔さん
テーマ「あはき法19条違憲訴訟と盲人の職業問題」

お誘い合わせの上ご来場ください。

 

No.437 なごや会セミナー

日本図書館協会でなごや会(公共図書館で働く視覚障害職員の会)主催のセミナーが開かれました。
日をずらし、東京の他に名古屋でも開催されました。

視覚障害者に限らず、すべての障害者に当てはまることでしょうが、就労の問題は切実です。

どこにどんな仕事があるのか、どんなスキルが必要なのか、採用試験を受けることはできるのか。
情報はあるのとでしょうか。

なごや会では、これまで40年にわたり30人を超える視覚障害者が、各地の図書館で働いてきました。

その歴史と実績を踏まえ、「公共図書館は、視覚障害者が活躍できる職場」だということを、当事者にはもちろんのこと、関係者にもアピールすることが重要であると、このセミナーを企画しました。

当然、先輩方も定年等で職場を去る日もあるわけです。そこで障害者サービスの充実と拡大のために当事者として、積み重ねてきたものを、ぜひ、後輩に引き継いでもらいたいということは、大きいと思います。

そのためにも、一人でも多くの視覚障害者が図書館で働く機会を得られるように活動しています。

四人の職員から、自身の学歴や視力の状態、職場での仕事内容等、丁寧なお話がありました。

図書館に職を得るためにある人は、あちこちの団体やグループに所属し、さまざまなイベントに顔を出して情報を集めたと。なかなか思うようにはいかないかもしれませんが、情報収集のために自ら行動をおこすことも大事だと感じました。

各自治体によって、採用形態が違う。自立通勤、自立業務、点字がどこまでできるのか等が最低条件になるとか。

現役の学生はもちろん、大学の先生も参加。熱心に質問し、終了後も個別相談をしている人たちもいました。
もっと早くにわかっていれば、司書資格もとれたのにとの学生さんの声も聞こえてきました。

我が郷里の新潟大学の先生は、公共図書館が視覚障害者に適した職場だとは知らなかった。今後の学生指導に役立てたいと言われていました。

反響大だったセミナーを振り返り、佐藤聖一さんは、もっと早く開くべきだった。今後、年に一回くらいは開催すべきかもと。
発信は大事、お互いにここがポイントではないでしょうか。

音ボラ事務局として最寄り駅からの往復誘導を四人でお手伝いしました。何事も勉強になります。

ところで、各地の大雪のニュースに、雪もない青空の下で暮らしていることが、後ろめたいような気持ちになってきます。

また、インフルエンザも猛威をふるっています。
でも、2月もなかば、もう少しの辛抱でしょうか。
お互いに負けずに頑張りましょうね。

みなさま、お元気で!!

No.436 千葉市での研修会

千葉市中央図書館主催の千葉市図書館音訳研修会に呼んでいただきました。

通常二日間に分けて、という日程のところ、図書館と私の方の調整がつかず、午前・午後の二回ということで、一日通しの研修会になってしまいました。

受講のみなさんには、寒いなか(もちろん会場内は暖かです)長時間で大変だったろうと思います。

中央図書館には、「なごや会」メンバーの大川和彦さんがいます。2014年の当会のシンポジウム「利用者のホンネに迫る」に発表者の一人としてお招きしました。

その時、大川さんは、音訳者も色んなことに興味を持ち、さまざまなイベントにも参加して、引き出しをたくさんもってほしいと言われていました。

昨年の「BABAフェス」や出版UD研究会とのコラボだった「なごや会」での私たちの発表を聞いて、今度千葉でもそんな話をしてほしいと言われていました。

そんなわけで、先ずは音訳周辺への理解ということで、音訳の始まりからサピエのことまで話しました。
視覚障害者の現状から、そもそも音訳とは、録音図書の質の問題等々。

そしてすべて音ボラネットの会員さんが音訳した「聞きやすい、内容がきちんと理解できる」読みを聞いてもらいました。

マンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「君の膵臓をたべたい」など、合成音声も。

ほんとうは「聞きにくい、質に難あり」もサンプルとして聞いてもらいたかったのですが、入手できず残念ではありました。
口で説明しても限度があり、あまり伝わりません。

以前は、「ありがとう」としか言えなかった利用者さんが、はっきりとものをいう人が、増えたとか、サピエのおかげで耳が肥えた等で、こんなのは聞けないと言う声があがるようになりました。

質が大事だということしっかり、頭に入れてください。他人事ではなく、自分のこととしてとらえましょう、と話しました。

点字図書館と公共図書館の両方で活動している人が多い地域のようでした。ほとんど利用者さんとの接触がないとのこと。

更には「点字毎日」の墨字版や「視覚障害」という月刊誌も持参し、回覧しましたが、その存在も知らない。
また「サイトワールド」も知らない。
それはやはり、問題ではないでしょうか。

「点字毎日」は図書館においてあるそうです。

利用者との懇談会のようなことをやってくださいとお願いしました。
音訳者側からも何かあれば、図書館に要望したらどうでしょう。

でもせいぜい、「うちのボランティアさんは、文芸書を読みたがるんで困ります」なんて言われないようにしましょう。

同じ目的、目標に向かって仲良く頑張りましょうね。
みなさまありがとうございました。