音ボラネット事務局 のすべての投稿

No.274 総会も間近

「こんなに早くからとりかかるの」と、ある図書館の方がびっくりされていた総会の準備も、大詰めを迎えています。続々と参加申し込みや、委任状が届いています。
さて、私たちの総会は、ご承知の通り、2年に1回の開催となっております。毎年では、地方からの参加のみなさんの負担が大きいこと、事務局のマンパワー不足と予算的なこともあって、この形が定着しています。その分、2日間に渡っての開催となり、「てんこ盛り」の内容になっています。少しでも多くの「お土産」を持って帰ってほしいと思う面もあります。
まず、テーマを決め、それに見合った基調講演をどなたにお願いするか。分科会は、どんなテーマのものをいくつ用意するか、そしてそれぞれの登壇者はと、けっこう頭を悩ませます。でも登壇者は、ぜひこの方にとお願いすると、みなさん二つ返事で引き受けてくださいます。
今まで、1度たりとも断られたことは、ありません。本当にありがたいことです。
更に、事務局内での話し合いはもちろんのこと、登壇者のみなさまとも、遠方の方は別としても、直接お目にかかって、何回か打合せをし、より充実した分科会を目指しています。
しかし、どんなに頑張っても、全員が満足するなんてことは、あり得ません。私たちのこのネットワークは、全国組織であり、独立したグループ、個人の連合体です。そこそこに情報量の多少、音訳技術の高低といった差があることは、否めません。
そんななかで、みなさんが、開けるようなものを企画しても、あまり意味がないと考えます。みなさんより一歩、いえ半歩先をいく企画をと思います。毎回足で稼いだ、利用者を取り巻く最新の情報を、お届けしたいと思います。
今回の「広がりをみせる音訳Part2~多様化するニーズに応えるために~」をみなさんが、どう受け止めてくださるか、多少の不安もありますが、ワクワクしています。締め切りも間近です。
一人でも多くの方に、お目にかかれることを楽しみにしています。

No.273 英語の教材

昨年の11月頃だったでしょうか。都内某有名私立大学の学部長から、連絡がありました。
弱視の学生のために、学内のインターネット環境を整えようと、業者に依頼してみたものの、どうもうまくいかない。
OCRの機材やソフトについて、アドバイスしてくれる人を紹介してもらえないかと。
即、お馴染みの千葉の松井さんに繋ぎました。
英語のOCR環境について知りたいということだったので更に、東大の先端科学技術研究センターの近藤先生を紹介してくださったそうです。
やれやれと思っていると、大学から再度連絡が入りました。
おかげさまで、東大のコミュニティに通うことになったが、すぐにというわけではないので、準備が整うまで、教材を録音してもらえないかと。
まずは、全て英語という教材を音訳してくれる人を、急ぎ探さなくてはなりません。
います、います。谷さんのところの「山びこ」には、英語や仏語など数ヶ国語に対応できる人たちがいたはずと、あわててかけた先が、名前は「やまびこ」でも違うグループでした。
でもこちらにも、英語可という人がいるということが判明。嬉しい間違い電話になりました。
早速に、この二つのグループのみなさんに、引き受けていただきました。
大学側も含め、顔を合わせての打合せを提案。ボラセンに集まっていただきました。
大学側の意向、当事者のこと、だいぶ様子がわかりました。
今までは、学内の学生にICレコーダーで録音してもらっていたそうです。
ということは、クオリティが求められるというよりは、それなりに英語が読めて、早く録音資料を提供できることが、最大の条件だと、理解しました。
また、教材の分量が増えた場合、3名の音訳者の他に、人員を確保しておいたほうが、良さそうです。
音訳者のバイリンガルの家族。目下、音訳は勉強中、でも英語が堪能な人。こういう人たちもいるのですね。待機しておいてもらえば、大丈夫。
で、試しに音訳したものを、大学側に聴いてもらったところ、教授たちもびっくりするほどの出来栄えだったとか。さすが音訳者。
これで、何とかいけると思っていた矢先。
当の学生が、4月以降、予定していた授業をとらなくなったと連絡がありました。
拍子抜けしました。
しかし、東大に通って、点字も学ぶそうです。
思うにこの学生は、弱視だったということもあり、視覚障害者としての生活や学習に対する訓練を系統だって受けてこなかったのでは、と思われます。
保護者が、横浜から車で送迎。大学へのさまざまな要望も保護者を通じてということが多かったと聞きました。
きっとこの学生にとっては、自立への1年になるのではないでしょうか。
また、何かお手伝いできることがあれば、協力しましょう。多忙ななか、準備を整えて待っていてくださったみなさん、申し訳ありませんでした。
ありがとうございました。
ところで近年、視覚障害者の大学進学率がすこーし、あがっているようです。
合理的配慮を求められる大学側も、そういう学生に対するノウハウがないとなかなか大変だと思います。
その上、外部団体との連携がないと、更に苦労することでしょう。
初めは、あちこち電話をかけまくりました。
最後に「音ボラ」という、いい団体に出会えましたと、学部長からお礼を言われ、少しホッとしました。
いろいろなことがあります。

No.272 テキスト化プロジェクト

東日本大震災から2年がたちました。
「忘れない」ことが、大切と言われながら日常に追われ、その意識が薄らぐこともあるのですが、私たちにとっては、一つのプロジェクトの立ち上げによって、忘れられない一つの原点になりました。
高知市内の視覚障害の方の依頼が、同市内の音訳グループの代表を経由して私に届いたのは、あの3.11直後のことでした。
「厚労省のホームページから発信されている震災情報が、そのままでは、使えない。つまり、PDFファイルをテキストデータに変換して、合成音声ソフトで読み取れるようにしてほしい」というものでした。
音ボラネットの会員有志とインターネットを通じて協力を申し出てくださった一般の方たちが、作業を進めてくれて、依頼者から被災地域をはじめとする視覚障害の方々に配信されました。
きっかけは以上のようなことですが、このような災害時における情報提供は、未経験でしたので、音訳者がどこまで、やらなくてはいけないのか、どこまでやれるのか、正直、不安でもありました。
しかしその後、需要の多さを知り「テキスト化プロジェクト」を立ち上げました。
私たち、というよりは、私のやり方の常で、体制がきちんと整ってからのスタートではなく、走りだしてから考え、補っているようなところがあります。
今、目の前で困っている人を待たせてはおけないという思いです。
その分、現場のみなさんには、ご迷惑をおかけしていることと思います。
そのようななか、参加メンバーがメーリングリストで、知恵を出しあい、時には依頼者の利用のしかたを確認しながら、カバーしてくれています。
この場で、関わってくださっている全てのみなさまに、改めてお礼申し上げます。
ところで、4月20日に予定している講習会への参加申し込みも早々と定員に達しました。ありがたいことです。
そして、これに続く、6月の総会での分科会でも、この「テキスト化」のことを、わかりやすく取り上げる予定です。
音訳者にとっては、まだまだ新しい分野の活動かも知れませんが、一人でも多くの方に、ご理解とご協力をいただけるものと信じています。

No.271 ディスレクシアな日々  ~美んちゃんの場合~

楽しい催しに参加しました。
発達障害への理解を深めるための映画と講演の集いです。
NPO法人みなと障がい者福祉事業団主催のドキュメンタリー映画「ディスレクシアな日々ー美んちゃんの場合」の上映と講演です。
まず、港区ですが、ディスレクシアを持つ人の啓発、サポートとネットワークを目的として設立されたEDGE(エッジ)の事務局があるからでしょうか、取り組みが進んでいると、主催者の挨拶を聞いて、感じました。
映画は、視覚障害の方たちのために、音声ガイドがつけられました。
美んちゃんは、留学先のイギリスでディスレクシアではと、指摘されました。
見た目もおしゃべりも普通。友達もたくさんいる。でも、読み書きに困難さがある。書類や報告書を作り、本を読むことが、大の苦手。
やっと就職しても、次々にクビになる。
思えば、子どもの時から、どんなに頑張っても成績が上がらなかった。問題はわかっていても、読み書きに時間がかかったり、文字の間違い、うっかりミスが多かった。
また、一番身近かな理解者であるはずのお母さんが、娘(美んちゃん)の障害を認めたくなかったがために、対立したりと、なかなか厳しい現実のなか、それでも美んちゃんは、負けない。明るく前向きに生きています。
そして、障害者によるビジネスプランコンテストに応募し、渋谷区代々木に「ユーロ・デリ」というお店を、持つまでになりました。
プロ級のヘアメイクのアルバイトもしています。
何しろペーパーテストが苦手なので、なかなか資格がとれません。
さて、美んちゃんが言っていました。
「私は自分の障害の正体がわからないまま、大人になった」 「小さい時に、自分の障害がわかり、それなりの支援があれば、もう少し違っていたかも」と。
ここでもやはり、当事者の生の声を聞くことの大切さを再確認しました。
ところで現在、小・中学生の6.5%が、発達障害を持った子どもと言われています。
現在私たちも、そういう子どもたちのために、ささやかですが、マルチメディアDAISY図書の音源を提供しています。この活動を通して、もっともっと学習障害への理解が広がらないものかと思っていました。でも、どなたかが言われていましたが「ディスレクシアに風が来ている」と。同感です。
ディスレクシアが取り上げられるようになりました。そして、当事者や保護者、支援者が一緒になって、もっともっと大きな風を吹かせないといけないと思います。
重くなりがちなテーマの催しですが、美んちゃんのパーソナリティーのおかげで、とても楽しい一時でした。
この催しを紹介してくれて、一緒に参加したIMDプロジェクトの佐伯さん、和田さんと、美んちゃんのお店で、売っているパウンドケーキを買い、美んちゃんの笑顔に送られて家路につきました。

No.270 朗読と講談のつどい

日本点字図書館の「朗読と講談のつどい」に出かけました。
小野館長から、ご案内をいただいておりましたので。
お誘いした人の中から、かたりべの木村さん、当事務局の大田さんが、参加してくれました。
音訳ボランティアというよりは、視覚障害の方とガイドの方で会場は満員です。
やはり、耳で聴く朗読や講談は、大きな楽しみの一つでしょう。
まずは、放送劇や司会などの経験があって現在は、図書館等で、朗読をしている清水奈美江さんです。
伊集院静の「時計のキズ」。
今まで視覚障害の方の朗読は、何回か聴いたことがあります。
ほとんどは、点字を指で追いながら語る、というスタイルです。
清水さんは、音訳された短編をたくさん聴いて、台本を選ぶそうです。そして本番でも、声をイヤホンで聴きながら、語っていきます。
会場からは、「さすが、うまいなあ」という声。
私たちも話の世界に引き込まれ、是非とも原作を読んでみたいという共通の感想を持ちました。
続いては、宝井駿之介さんの創作講談「日本語点字の父 石川倉次伝」でした。
前に置かれた机を張り扇で、パ、パン、パンパンと叩く。口から機関銃のように言葉が飛び出す。
私にとって初めての講談です。
同じ声をだすということでは、私たち音訳者と通じるものがありますが、長時間、声の張りを失わずリズミカルに「一席を読ましていただく」(宝井さんの言)のは、さすがです。この世界の史実に疎い私には、石川倉次さんの人となりを垣間見させていただきました。この方の努力がなければ、視覚障害者の文字は、生まれなかったわけです。感動を覚えながら聞かせていただきました。
尚この宝井さんの講談は、日点初の試みとしてインターネットで流して、各地の点字図書館関係者に観て聴いてもらえたようです。
小野さんは、今後もこの方式を取り入れたいとおっしゃっていましたが、天下の日本点字図書館さん、新しい試みをどんどん取り入れてほしいと思います。
予め日時が決まっているものです。会場まで足を運べない人のためにも、ぜひ、軌道に乗せていただきたいと思います
会場では、東京ヘレン・ケラー協会点字図書館の石原館長ともお話ができました。
ありがとうございました。

No.269 シンポジウム「もっと知ろうデイジー教科書を!」後日談

マルチメディアDAISYに初めて出会った時、とにかく編集が大変という印象を持ちました。
この分野で、もし音訳者が何かお手伝いできることがあるとすると、音源を提供することくらいかなあと考えていました。
しかし、なかなか具体的な話は出てきません。
都内の製作グループでは、分業は難しいというような話でした。
ようやく、音訳者の出番がきました。
伊藤忠記念財団の矢部さんたちが、子どもたちのために、児童書のマルチメディアDAISY化に、取り組むことになり、是非とも音源を提供してほしい、ということでした。
初めてのことで、すべてスムーズに進んだわけではありませんが、この共同作業も、3年目に入ります。
貴重な経験をさせていただいています。
そして、この度のシンポジウムです。
あおもりDAISY研究会の神山先生に、お目にかかりました。
「国語は、肉声が必須」、「音訳ボランティアとの協力」という方でした。
やはり、こういうふうに考えている方がいるということが、嬉しくて、早速に名刺交換をしました。
すぐに、「ぜひ、協力してほしい」というメールがきました。
IMDプロジェクト事務局のメンバーと相談して、テストケースでお引き受けすることにしました。
著作権切れの作品を集めた「青空文庫」のなかから一冊、「夏目漱石」の作品が、指定されました。
ネット上から、プリントアウトすればいいので、原本の受け渡しがなく、楽です。
完成作品は、インターネット上のWebサーバーに、一般に無償公開なさるそうです。
「すぐやる課」のメンバーが、すぐに音訳を始め、すでに一部は、先方におくられています。
「音ボラネットと連携し、訓練された質の高い音訳者のお力をいただけることで、聞きやすいDAISY図書を作れると考えています」と嬉しいメールもいただいています。
更にまた、IMDメンバーの一人は、お子さんが小学校時代に、お世話になった先生に、シンポジウムの資料を、お送りしたそうです。
「今回の資料にあるようなデイジー教科書等については、お恥ずかしいかぎりですが、ほとんど不案内でした。
これをきっかけに少しでも勉強していきたいと思います。
今までの教え子の中には、学習障害や自閉症、ダウン症、アスペルガー症候群などの障害を持つお子さんがいました。また正確に診断されていなくても、特別支援の必要なお子さんがたくさんいます。
すべての子どもたちに、それぞれに合った教育を受けさせてあげたいという気持ちは、常に抱いています。みなさんのような方々が、このような活動をされているということを知り、嬉しいかぎりです」
良き出会いは、良き連携につながります。
それぞれができることからはじめましょう。

No.268 シンポジウムに参加して

日本障害者リハビリテーション協会主催のシンポジウム「もっと知ろう、デイジー教科書を!」に参加しました。
IMD(伊藤忠記念財団マルチメディアDAISY)プロジェクト事務局メンバーも、全員集合です。
110名の参加者の中には、北海道や東北、東海や九州等、遠方からのみなさんも多く、中に熱心な懐かしい音訳者のお顔がいくつもあって心強く嬉しく感じました。
読むことに困難を抱える児童・生徒にマルチメディアDAISY教科書を提供しているのは、リハ協を中心とした、製作団体のネットワークの皆さんです。
問合せに対応可能なボランティア団体は、全国に16あるようです。
このネットワークのおかげで、1000名の児童・生徒にDAISY教科書が、提供されているそうです。どんなにか助かっていることでしょう。
私もこの製作団体で活動している方たちを何人も知っています。
もともとは、音訳ボランティアだった方もいます。
みなさまの大変な努力に、敬意を表します。
しかし、ここで敢えて申し上げます。
「教科書製作は、ボランティアがやるべきことではない」と。
文科省がやるべきことです。
しかし、そういった環境が整備されるのを、待ってはいられない現実があります。
目の前に必要としている児童・生徒がいるのです。
でもだからと言って、ボランティアに頼らざるを得ない現状は、決していいことではありません。
このことは、常に確認が必要なことではないでしょうか。
文科省だけではなく、財布の紐を握っている財務省の問題もあるそうで、ことは単純ではないのです。
しかし、国への働きかけも、諦めず、続けなければなりません。
それも、会場から視覚障害の方が、拡大教科書のことを例に、当事者や保護者がまとまって声をあげていくことの大切さを訴えていました。
その通りだと思います。
パネリストのお一人が、国語は肉声が、必須。そのためには、音訳ボランティアやアナウンサーとの協力が大切というお話に、大いに共感しました。
また会場の先生の声として、テスト問題を作る際、拡大も点字もDAISYも、一人の先生が作らなくてはならず、スキルがなく厳しいと言われていたことにも、考えさせられました。
もっと気楽に分業ができるようになるといいと思います。
課題は、いろいろあります。立場や考えかたもさまざまです。
しかし、子どもたちの笑顔のために、みんなで持てる力を結集して、ひとつずつ壁をとりのぞけたらと思います。
今回もたくさんの新しい出会いがありました。
大いに勉強もさせていただきました。
ありがとうございました。

No.267 学習障害への理解を!

瞬く間に、松の内も過ぎました。
ここ数年の私の目標は、「一日一日を丁寧に生きる」ということなのですが、言うはやすしで、目の前のことに追われ毎年、目標達成とはいきません。
今年こそはと、思いつつ、目先のことに早くも疲労困憊。先が思いやられます。
今年は、二年に一回の総会が、あります。泣き言を言っていられませんね。頑張ります。
みなさま、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、お子さんが学習障害を持つKさん。
昨年10月に開催した当方のシンポジウム「マルチメディアDAISYは今」にお招きした方です。
お便りをいただきました。
学習障害のある特別な支援を必要とする児童や生徒への対応が、お粗末すぎると思います。
「学習障害を認めてしまうと、自分たちの教え方を否定されると思うようです。だから、子どもも親も、努力が足りないというのです」
「実際に教師でもないのに、ケチをつけるな、と言われました」
「これから教師を目指す若い人たちに、学習障害への理解を進めていくほうが、教育界を変える早道ではないかと、思うようになりました。どれだけの子どもや親が苦しんでいるかを知ってほしい」と。
この頃少し、新聞やテレビで、取り上げられるようになってきて、理解の輪が広がっていくかもと期待したのですが、世間の無知と偏見の壁は厚いようです。
「シンポジウムではついつい、今、子どもたちが、置かれている現状を訴えることに夢中になってしまいました」
「一番言いたかったことは、以下のことでした」
「息子たちは、音韻性のLDです。DAISY教科書を大学で製作しているグループのものが、届いた時、彼らは聞けないと言いました。聴覚過敏がひどいこともあり、聞くのが辛かったようです。今は、デジタル音声になれましたが」
「私は、音訳者の方は、プロだと思います。音としてとらえる音韻性のLDには、音訳者の方に音を担当していただきたいと思います。私が一番みなさんにお伝えしたかったのは、このことです。保護者の声を聞いてくださる場を作っていただき、本当にありがとうございました。みなさまにもくれぐれもよろしくお伝えください」と。
合成音声を否定するものではありませんが、肉声、それも訓練された肉声に適うものはないということでしょうか。嬉しい言葉ですね。
教師になりたいという夢を持っている息子さんが今、無理解な学校現場で、挫折しかけているそうです。かける言葉も見つかりません。
また、一人でも多くの人に、学習障害のことを理解してもらう場を作っていけたらと思います。
はからずも、日本障害者リハビリテーション協会主催のシンポジウム「もっと知ろう、DAISY教科書を」が予定されています。
日時 2013年2月3日(日)10時30分~16時会場 戸山サンライズ
参加費 500円申し込み先 日本障害者リハビリテーション協会情報センター
私も参加させていただきます。
会場でみなさまにお目にかかれたら幸いです。

No.266 シンポジウム

氷雨降る15日、なごや会(公共図書館で働く視覚障害職員の会)主催のシンポジウム「障害者にわかりやすい音訳、録音資料の基本を考える」が、開かれました。
今春から なごや会の会員になりました、とおっしゃる専修大学の野口先生のご紹介で、神保町の神田キャンパスが、会場です。
足元の悪い中、音訳者はもちろんのこと、図書館や出版関係者、合成音声のソフト開発者等々、北海道から山口まで、170名定員の会場が、狭く感じられるほどの大盛況ぶりでした。
音ボラネット事務局として、東京駅からのガイドや受付のお手伝いをさせていただきました。
この度は、本年3月に定年を迎えた、横浜市中央図書館の川上正信さんの退職記念のシンポジウムです。
川上さんには、音ボラネット立ち上げ前の全国大会の頃から、さまざまアドバイスをしていただいてきました。
横浜から、事務局の例会にも参加してくださっていました。また、私がNHKの取材を受けた時も、利用者であり、図書館職員でもある川上さんと、横浜の、とある橋のたもとで待ち合わせるという「絵」を撮られたこと、「音訳者のネットワークに期待する」とおっしゃってくださったこと、懐かしく思い起こされました。
さて以下、私の個人的感想等記してみます。
やはり、音訳は奥が深いということです。そもそも1+1=2というような世界ではないと、音訳講師の高橋先生からも、改めてご指摘がありました。
「音訳とは、こうあるべきだと教わりました。だからその通り実践しています」というのは、基本としては、間違ってはいないのですが、時代は、移り、利用者のニーズも多様化しています。
そうなると、基本は大事、しかし、そこをどう開いていくかということを、考えていかなくてはなりません。
読む物によっても大きく違います。
答のない世界だからこそ、各々の感性を研くしかないのだと思いました。そして、「よい録音図書に出会えるのは、少ない」という一言に、ふだんなかなか聞こえてこない利用者の本音として、重く受け止めました。
川上さんは、音訳の手法に疑問を感じ、10年ほど前から、NHK日本語センターの講座を受講。朗読コンテストでは、7回も優秀賞を受賞されています。このことに関しても興味深いことを言われていました。
当然ながら川上さんは、原本を点字に打ち直して、録音するわけです。「漢字に惑わされずに読める(点字はカナ表記のため)、そこが、みなさんと違うのかな」と、新鮮な驚きでした。
また、「間」について、「音訳者に恐怖心がある」結果「聴き手の理解を助けるための間、のない人がほとんど」だそうです。
「聴き手の存在を、常に意識すると聴き手に内容を伝えようとする意識が、強くなる。目指すのは、読み手の音訳ではなく、聴き手のための音訳であることを忘れないこと」そしてそれに伴い音訳者も、「聴く力をつけることが、大切で、それが音訳スキルをあげる早道」とも。
聴くことの講習を入れたり、ラジオを聴くことも、薦められていました。
忙しさのあまり、どこかに置き忘れている、音訳の基本を、再確認させていただきました。
シンポジウムに続くお祝いの会では、その他のなごや会のメンバーや、野口先生、高橋先生とも楽しくおしゃべりさせていただきました。
有意義なひとときでした。

No.265 コンサートも無事終了

社会福祉法人視覚障害者支援総合センター主催、「競い合い、助け合うコンサート2012―羽ばたけ視覚障害音楽家たち」が、無事終わりました。
このコンサートは、同センターの高橋理事長の「こだわり」と「思い」によって成り立っている、と言っても過言ではないと思います。
若き視覚障害音楽家が、どんなに力があったとしても、「発表の場」がなければ、誰の目にもとまりませんし、広く世の中に知られることはないでしょう。
高橋理事長は、チャレンジとチャンスの場を作るために、頑張っています。
私は、その「思い」に賛同した一人で、ほそぼそながら応援してきました。
実行委員となり、話し合いの場に加わり、当日のお手伝いもやっています。
しかし、私の最大のお役目は、チケットの売りさばきだと心得ています。
どんなに素晴らしいコンサートであっても、集客がままならなければ、成り立たないわけです。
私たちは日頃、音訳という一つの行為を通して、視覚障害者のお手伝いをしています。
そして、その中のわずかな音楽家の卵たちを、応援することも大きく捉えれば、私たちの活動の一つだと考えています。
日にちが限定され、無料でもありませんから、全員参加はありえません。
しかし、毎回、一人でも多くの方に参加していただければと思うのです。
昨年から、ペアチケットができました。ご夫婦で、友だち同士で、親子で、また私たちの利用者と一緒に参加すると、一人2000円にも満たないのです。
今回初めて参加してくださった、府中のTさんはご主人と、長年辞書作りに携わってこられたSさんは、お仕事仲間と、国立のKさんは、めったに会えないお友だちと、地元杉並のAさんは、福祉関係の方と、そして当音ボラネットの事務局のいつもの面々、ことに島村さんは大先輩のAさんと、利用者さんを複数、数珠つなぎのようにして参加してくれる猪俣さん等々です。
中でも感動的だったのは、「まだチケットはありますか」と、当日の朝メールをくれた那須塩原の松木さんです。
都内のお嬢さんと生後6か月のお孫ちゃんを連れて参加。
事前に主催者側には、了解をとってはいましたが、途中ぐずってもと、入口の側の席へ案内。
音色に魅せられたのか(松木さん)全くぐずらず、お嬢さんも、しばらくはコンサートは、無理とあきらめていたそうで、喜んで帰られたとか。若々しいソプラノ、二本のフルートによるハーモニーに、心癒されたようです。
我が家の愚息も、先輩二人を案内。初めての経験だったそうで、参加して良かったと言ってくれていたそうです。
若い人にこそ聴いて欲しいし、視覚障害者の置かれている現状のようなことも、少しでも理解してもらえると、いいですね。このほかにも、いつも協力、応援してくださるたくさんのみなさまに、この場を借りて、お礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。