今年は例年よりひと月ほど早く11月14日(土)「競い合い、助け合うコンサート2009〜羽ばたけ視覚障害音楽家たち〜」が、いつもの都内杉並公会堂で開かれました。皆さまのおかげで50枚近いチケットを売りさばくことができました。いつもこのコンサートのことを一人でも多くの人に知ってもらい、会場に足を運んでほしい。視覚障害者への理解を深めてほしいと願っています。
今年は実行委員を仰せつかったおかげで、主催の視覚障害者支援総合センターの高橋實理事長はじめ、職員のみなさんのご苦労の一端がわかりました。当日は参加できないのに寄付のつもりでチケットを買って下さったり、家族や友人、そして何人もの障害者をお連れしたり、また、音訳テープやCDで案内を吹き込んで下さったり、グループの例会で紹介して下さったりとたくさんの方々の様々なご協力をいただきました。心から感謝申し上げます。
すべての演奏を聴くことができませんでしたが、2グループ4個人の出演者の中で、木下航志さん(ピアノと歌)と楊雪元さん(声楽と中国笛)だけは聴かせていただきました。木下さんは弱冠20歳、あの小柄で華奢な体のどこから出てくるのかと思われる力強い歌声。和製スティービーワンダーと呼ばれていることに納得。一方、楊さんのテノール、圧倒されました。その上、白杖でトルコ行進曲を演奏。!?!?!?でした。「知人に穴をあけてもらいました。日本点字図書館で買ったれっきとした白杖ですよ」と。
観客のみなさんからは、どれも素晴らしく、パワーあふれるものばかりで元気が出ました等々、感想が寄せられていました。早いですが、来年もぜひよろしくお願い申し上げます。
11月6日(金)高田馬場にある日本点字図書館に岩上館長をお訪ねしました。私は以前、全くの地域ボランティアで公共図書館も点字図書館もあまりなじみがありませんでした。こういう立場になっても、日点の館長というと遠い存在のような感じで一対一で、きちんとお話をさせていただいたことがありませんでした。
「ネットワークが立ち上った時は大変な期待と関心を持って注目していたが、このところ何を目指しているのかよくわからない」と言われました。当ネットワークの現状をご説明し、アドバイスもいただきました。視覚障害者であり、福祉施設の長である岩上さんには、これからも色々と教えていただきたいと思います。日点ではすでに2011年テープ全廃と発表していますが、もう大量のテープが入手困難という状況になっています。
しかし、高齢の利用者の多くはまだまだテープ派だそうです。CDがあり、ネット配信ありと色んなものが増えて、利用者が自分のライフスタイルに合った選択ができるようになって良かったはずなのに、一方で選択肢がいくつもあるという情報を知らない人がいると伺いました。そのことに私たちはどんな手を差し伸べたらいいのでしょうか。共に考えなければいけないことのひとつです。
区立葛飾中央図書館がオープンしました。3日と6日の2日間、オープニングイベントとして、当音ボラネットの鶴岡さんが代表をつとめる「葛飾音訳ボランティアの会」の皆さんによる朗読会が開かれました。まず図書館ですが、下は各種テナントが入った商業スペース、上は住宅棟といった駅前の複合施設の中にあります。財政面などから今はほとんどこのタイプです。今まで図書館に縁のなかった人たちも、買い物や食事がてらに立ち寄るということで、来館者が増えているようです。
さて、朗読会ですが、ベテランさんから初歩の人まで全員参加。落語あり、時代ものありと変化に富んでいて、皆さんの一生懸命さが伝わってきました。私自身朗読の経験がありません。音訳者が朗読会を開くのは、時間がもったいないのではと思っていました。そのための準備に時間をとられるのは、本来の音訳活動がおろそかになる。そんな時間があるなら1冊でも多くの本が読めるのにと思っていました。
しかし、あちこちの朗読会に出席させていただいて、少し考えが変わりました。みなさん生き生きしてるし、楽しそうです。音訳は地味だし、孤独な作業だし、日々黙々と音訳に勤しんでいる人たちにとって、たまにはこういうことがあってもいいのかもと思った次第です。「私たちは、あくまでも利用者のための音訳が目的なのだから、日頃の活動に支障のきたすことのないように、今回の朗読に取り組もうと確認しあいました」と言う鶴岡さんの一言が心に残りました。
今年も11月1日〜3日まで、都内墨田区で「サイトワールド 2009」が開かれました。第4回目となりました。視覚障害者向けの総合イベントです。日常サポートから最先端テクノロジーまでを実際にさわって確認できる催しです。講演やフォーラム等もあります。
ここ何回か、当ネットワークとして、受付や会場の案内等をお手伝いしています。私も初日の午後、参加させていただきました。顔見知りの出展の方々や音訳ボランティアの皆さんとしばし歓談。
今年はロービジョン関連の出展が多いように思いました。音訳者もこういう機会に視覚に障害のあるみなさんが必要としているものを実際に体験してみるのも大切ではないでしょうか。当会の呼びかけでお手伝い要員応募して下さったみなさん、お疲れさまでした。
10月26日(月)月刊誌「世界」プロジェクトの2回目の説明会がありました。今回は都内と神奈川と静岡の個人参加の混成チームです。(この日はグループ参加の仙台の方もかけつけてくれました。)グループ参加の皆さんと違い、不安やとまどいが大きいようです。でも「音訳マニュアル」もありますし10月号と11月号を読み終えた千葉の2グループの方たちのノウハウもあります。何よりも「世界」を待っている利用者の皆さんに応えたいという共通の「思い」がありますから、案ずるより生むがやすしではないかと思います。
当初はテストケースでもあり連携がスムーズにいくようにと、東京、神奈川、埼玉、千葉等のグループ参加を呼びかけていましたが、せっかく、手をあげて下さった地方(仙台)のグループも個人も今後につなげていくためにも、ぜひ、いっしょにということになりました。結局グループ参加が千葉で3チーム、都内と仙台が各1チーム、そして、個人参加が1チームで計6チーム、約100名がこのプロジェクトに参加してくれています。都内と仙台のグループと個人参加のみなさんは音ボラネットの会員です。
「音ボラネットのおかげで意識が高まっていますよ」「協力しなくてはと思いました」との声が寄せられ、ほんとうにありがたく思いました。課題はあるかもしれませんが、今後も、色々な立場を超えて利用者が待ち望んでいる情報を届けられたらと思います。
10月16日、都立文京盲学校で「第78回全国盲学校弁論大会」が開かれました。過去の大会での弁論を一冊にまとめた「弁論集」を当音ボラネット事務局で音訳し、今年5月、全国の盲学校に寄贈しました。そんなことからそれぞれの弁士の生の声が聞けると楽しみにしておりました。
特別審査員に作家の阿刀田高氏、アトラクションには、全盲の演歌歌手、清水博正氏が招かれていました。結果は年長(32歳)の専攻科で学ぶベトナムからの留学生の「僕に続く後輩のために」が1位となりました。上手な日本語です。帰国してからも頑張ってほしいと心から思いました。
あとは、はからずも14歳から18歳までの若い現役生です。中でも2位の先天盲の17歳の弁論が心に残りました。赤だ黄色だ、黒だと言われても全くわからない。でも、普通の人と同じテーマで話をしたい。色そのものはわからないが、色についての知識を増やしたい。今まで取得した知識として、ユーモアを交えて黒は丹波の黒豆の黒等々披瀝していました。誰か「色辞典を作って!」という一言は彼の叫びのように聞こえました。
視覚に障害を持つ若い人たちの今を生きる「いかり」や「悩み」、その先の未来に向けての「不安」や「希望」。一人ひとりの弁論が聴く者の心を打ちます。これからも少しでもお役に立ちたいと心新たにしました。日頃、勉強会でお世話になっている「三療音訳会」の成田さんとご一緒し、共に感動した半日でした。
10月8日(木)都内も日本縦断の台風のおかげで各交通機関が大混乱。お昼頃までには、何とか突風も収まり、文京区の三療音訳会主催の渡辺勇喜三先生の講演会が無事開かれました。長く文京盲学校で教鞭をとられ、現在は日本点字委員会、、医学用語点字表記専門委員会委員長のお立場です。
三療音訳会の立ち上げからご指導下さり、今は栗原先生にバトンタッチされています。ようやくご自身の時間が持てるようになり、、取りためてある「源氏物語」の勉強を始めたいとおしゃる。その他の分野にも造詣に深く、横文字のスペルもスラスラ。すばらしい方がたくさんいらっしゃいます。
初めに音訳についての一般論、続いて医学関係文書等の音訳についてお話しくださいました。中で「物によって、あえてゆっくり読んでいるが、利用者はどんな聴き方しているのか」という質問がでました。「読み手のふつうのペースでよい。私は1.5倍速で聴いている」とのこと。ものにもよるでしょう。個人差(特に若い人と年配の人等)もあると思います。倍速ないしは3倍速で聴いている人もいます。利用者も聴き方もさまざまだと再確認しました。何事も一律ではない。答えはひとつではないことの方が多いのが音訳の世界ではないかと思います。色々な立場の方のお話を伺うたびに新しい気づきがあります。
いよいよ、月刊「世界」の第1回(10月号)の音訳版が出ます。といっても、まだ、シュミレーションの段階ですが利用者のモニター希望が続々ときているようで皆さんの関心の高さがうかがえます。今現在、グループ単位で参加しているのが千葉で3チーム、都内で1チームとなっています。あとは、都内と神奈川のそれぞれのグループから単独もしくは2〜4名の方が名乗りをあげてくれています。つまり混合チームの音訳者が足りていません。
コーディネーターの千葉の松井さんとしては、最終的に6チームできると年に2回の対応となるので負担が少なく永続性が保たれると、さらなる音訳者を探しています。
私もピンポイントで、あちこちに声をかけておりますが、再度の皆さまのご協力をよろしくお願い致します。今まで快く、お引き受け下さった皆さまには、心から感謝申し上げます。
20日(日)、先月に引き続き、YAクラブの事務局を訪問しました。北上尾の駅から会員の皆さんと一緒に事務局の加藤さんの車に便乗、ログハウスへと向かいました。前回とは違うメンバー(神戸からの参加の人もいました)も加わり、またまたテンポの早い会話に圧倒されていると、本の題名や声優の名前に解説が入り、少しわかったような気になりました。
さて、ここで前回話題となった某図書館の音訳CDを聞かせてもらいました。10分も聞いていられません。即、返却したという話を思い出しました。活舌がどうの、アクセントがどうのという問題ではなく、正に自分の読みに酔っているというような感じです。これは例外中の例外だと思いますが、聴かされる利用者が気の毒です。
ところでYAクラブの音訳スタイルですが、私たちの通常の音訳とは多少違うようです。楽しい音訳、つまり、音訳者自身が楽しんでいます。会の代表の美月さん自身がダイナミックリーディングと表現されているようですが、何となくわかります。ただ、こういうと、それは音訳ですか、それでいいのですかという人が必ずいます。これが不特定多数の人に向けて読まれ、図書館の蔵書になるものなら問題があるでしょう。しかし、私たちの読書スタイルが様々なように、利用者だって同じです。たまには寝っころがって読みたいこともある。
YAクラブの音訳を初めて聴いた時、図書館のものとは違うと違和感を覚えた人が2回3回と聴いている内に、すっかりハマッてしまったという話が印象的でした。読書とはきわめてプライベートなものです。読みたいものも人さまざま。音訳の仕方もその読みがいいという利用者がいれば、それでいいのではないでしょうか。大切なことは利用者にとって選択肢がいくつもあるということだと思うのですが、みなさんはどう思われますか。
(スタッフ同行 大田)
16日(水)岐阜アソシアの高橋館長とお会いしました。所用で上京の折を狙い、時間を作っていただきました。高橋さんは日盲社協 情報サービス部会の部会長という立場もあります。そういうことから選挙公報の音訳版を手がけていらっしゃるのでその辺のお話を一度きちんと伺いたいと思っておりました。
総務省からの委託事業だとばかり思っていたら違いました。高橋さんを中心とする選挙プロジェクトの独自の取り組みです。黙認という形らしいです。視覚障害者の情報保障という面からも国が責任を持って取り組むべきことです。私たち音訳者も視覚障害者と一緒になって、行政に働きかけていかなければならないと思います。
高橋さんたちがカバーできていない小選挙区制のことやマニフェストのことなど、私たちが協力できることがありそうです。それには読みの統一ということが課題です。マニュアルを作るべきです。その他にも「地デジ」関連の情報や、「インフルエンザ」に対する情報が不足しているそうです。正に生活情報そのものです。
全国音訳ボランティアネットワークとしては単独でできないことでも、この高橋さんたちのような方々と情報交換し、連携できればより有意義な活動ができるのではと考えています。
(スタッフ 鶴岡、居谷同行)
全国音訳ボランティアネットワーク通称〝音ボラネット〟のサイトです!