音ボラネット事務局 のすべての投稿

No.89 韓国MBCからの取材

まさに花冷えの毎日です。この度(4月1日)韓国MBCから取材を受けました。私たちの活動拠点である飯田橋のボランティアセンターから紹介されて、ということでした。1時間の番組の中で色々な角度から取材をしているようでした。

日本国内における音訳ボランティアの実状、当ネットワークのことなどお話しました。実際に何かを読んでみてほしいという事前の申し出があったので、当事務局の伊藤さんにも同席してもらいました。初め韓国で広く読まれている本としてレイモンド・ジェーンの「読書をする女」を指定されたのでしたが、日本国内ではすでに絶版になっていて入手できませんとのこと。急遽、お好きな物をと言われ、はたと困りました。

いくら韓国とはいえども公共の電波に乗るわけで、どんな本でもいいという訳にはいきません。「著作権」がありますから、著者没後50年以上たっているものというわけで、伊藤さんの手元にあった宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を読んでもらいました。通訳を通してのやり取りで、私たちのことが、どれだけ伝わったのか不安は残りますが、福祉の分野ではまだまだこれからという韓国なので、今日の話をきちんと伝えて参考にさせてもらえればと言われたことに少しホッとしました。いつか、どこかで、みんな繋がっていく。いつもそんな風に思っています。

No.88 テープ版読者会のこと

3月23日(月)、当ネットワークの会員でもある都内・杉並のテープ版読者会の総会におじゃましました。ユニークで熱心な活動を続けているグループの一つです。代表の舛田さんとのそもそもの出会いは、私たちがネットワークの準備会を立ち上げ、初の全国大会を企画していた2004年頃のことでした。

週刊金曜日という雑誌の音訳版が読み手の都合で終了となってしまった。楽しみにしている利用者がいる。読んでくれるグループを探してもらえないかと連絡があった。週刊ものを読むのは大変だから、そうそう見つかるものではない。「舛田さん、自分で会を作った方が早いわよ。協力するから。」と冗談半分に言っている内に、ほんとうに会を立ち上げてしまった。運営資金はもちろんのこと、録音機材をそろえるお金もない。著作権のこともあるし、とりあえず出版社に協力してもらわなくちゃと、一緒に出向いたことが、今は懐かしい。

雑誌を読む時の最大のネックは著作権のことだと思いますが、ここでは、金曜日側の全面協力でクリアになっていることが、すばらしいことです。初めはあちらこちらのグループで活動している人たちが個人で参加ということが多かったようですが、今は音訳講座を開き自前の音訳者も誕生しているようです。

いくつかのグループができていて、ひと月に1回、読み当番が回ってきます。1冊を8人で分担。発売の1日前の木曜日にほんたい(週刊金曜日)を入手。メール便で、早い利用者には日曜日に手元に届くというから驚きです。随時ボランティアを募集中、パソコンでのやり取りで地方からの参加も歓迎だそうです。

*詳しくは「テープ版読者会」へ。 TEL&FAX;03−3530−2565

E-mail;tapeban-dokusyakai@tea.ocn.ne.jp

No.87 読書バリアフリー

3月21日(土)西早稲田(都内)の日本盲人福祉センターで「2010年国民読書年に向けて視覚障害者・高齢者の読書バリアフリーを考えるシンポジウム」が開かれました。日本盲人福祉委員会、文字・活字文化推進機構の主催です。私たちの全国音訳ボランティアネットワークも後援団体の一つとして参加しました。そして、事務局スタッフ(居谷、泉、猪俣、岩田、大田、島村、遠田、安川)は、誘導、会場、受付とお手伝いをさせていただきました。

ぶどうの木理事、橋本宗明さんの「視覚障害者の文字に接する権利」、都立中央図書館の田中章治さんの「公共図書館における視覚障害者サービスの歩み」の2題の講演がありました。お二人とも全盲です。この中で特に橋本さんが「文字に接することは、自分がどう生きるか、何のために生きるか、自分の生き方の参考にするため」とおっしゃったことが強く心に残りました。

この後、筑波大学付属視覚特別支援学校の宇野和博先生から読書バリアフリー法案の提起がありました。後半は5人のパネリストによるそれぞれの立場からの発表がありました。筑波技術大学の長岡先生や千葉県立中央図書館の松井さん、ロゴス点字図書館の高橋さん、ジャーナリストの中和さんと、そうそうたるメンバーの中に私も音訳ボランティアの代表として加えていただきました。

100名の定員の会場がほぼいっぱいでした。青森、大阪、高知と遠方からの方、出版関係者、学生、盲学校の先生、教育委員会の方、視覚障害者、マスコミ等々、実に幅広い分野の皆さんが集ってきていました。私たちも常に著作権の壁が高いハードルとなっています。ことに、図書館に属していない地域ボランティア(自主ボランティア)は尚のことです。読書バリアフリー法の制定を目ざして、更に大きな輪が広がることを心から願います。

No.86 暗闇ライブ&トーク

3月7日、都内世田谷区で津軽三味線の踊正太郎さんの演奏と国立民族学博物館の広瀬浩二郎さんのトークがありました。お二人とも全盲です。少し遅れてしまった私は案内されて一歩会場に入るやいなやドアが閉められ、半端じゃない真っ暗闇に焦ってしまいました。踊さんの力強いバチさばきは聞こえるものの、自分は会場のどの位置にいるのか、広さは?参加者は?まるでわからない。しまいには津軽三味線の音色がどの方向から聞こえてくるのかすら定かではなくなる。

ようやく演奏が終わり広瀬さんのトークがはじまる。リンゴのにおいのするアメを配られる。暗闇を自在に動いている気配。「まだアメをもらっていない人」と言われ、思わず黙って手を挙げようとして、声を出さなくてはと気付く。「ハイ!」という声と同時に差し出した私の手に広瀬さんがアメを置いてくれる。続いて、点字の名刺大の紙が配られた。点がいくつ打ってあるか数える。私は指の感覚が鈍いかも。何度も何度も指でなぞって、わかった気になったが自信はない。

踊さんの演奏は相変わらず素晴らしかったが、私は初めての広瀬さんのワークショップにすっかり気をとられてしまった。見えないということはこういうことかと実感させてくれたとても有意義なひとときでした。

No.85 ネットワークの今後

3月4日、私たちの活動拠点である「ボラセン」で名古屋ライトハウス理事の近藤豊彦さんにお目にかかりました。2006年の全国大会、そしてその後の浦口明徳さんの告別式以来です。

近藤さんは一般企業を経て福祉畑に飛び込まれた方です。6月5日の分科会のコーディネーターをお願いしています。発想がユニークで遊び心のある方だと思います。ネットワークの行方、活動資金のことなど色々とアドバイスをいただきました。男性目線と主婦目線には違いがあります。当然ではありますが「目からウロコ」のこともあれば、「それは違う」と感じることもありました。

しかし、私たちのこのネットワークを深く社会に根付かせていくためには「仲良しこよし」の集まりだけでは限界があるということで一致しました。その辺は設立から2年がたつ今こそ真剣に考えるべきことです。総会で皆さまにもお知恵をおかりしたいと思います。みんなで考え、みんなで運営していくネットワークですから。

No.84 マンガを読む

東京タワーの最寄りの駅は地下鉄の神谷町ですが、正にタワーの下あたりに霊友会法友文庫点字図書館(団体会員)があります。館長の川岸さんはじめ職員の皆さんは、いつも気さくに声をかけて下さり、「協力できることはやりますよ」と言って下さっていました。15年間もマンガ(雑誌の連載もの)を読んでいるということで、お話を聞かせていただこうと出向いたわけです。

担当は三浦さんという男の方です。実際のものを聴かせていただきました。セリフとナレーション、背景(絵)がありますがほとんどセリフとナレーションのみ、絵の説明はなし。以前は絵も読んでいたそうですが、ゴチャゴチャして、わかりにくいので止めたとか。スッキリしてわかりやすいと思いました。

利用者からのマンガの読みのニーズが増えていますが、指導して下さる方はいらっしゃるでしょうか。今後「マンガを読む」講座を開きたいと考えているところですが、マンガに関して何か情報をお持ちの方、教えてください。

No.83 「アクセシブルな電子本を届けよう!」

2月22日(日)、「アクセシブルな電子本を届けよう!—読書に障害のある読者が利用できるシステム構築をめざして」が開かれ、3題の講演がありました。(都内・日本教育会館)アメリカのジム・フラクターマンさん(ブックシェアプロジェクト代表)の話が一番興味をそそられました。

ブックシェアとは、会員制のウェブ図書館サービスで、入会金と年会費を払った読書障害者(うち、80%が視覚障害者)はウェブ図書館にアップされている電子本を自由にダウンロードし、自分にあった読書スタイルで読書をすることができます。ここの実績を評価したアメリカ政府は予算をつけて、教科書や教材の電子化を委託しているという話は「進んでいるアメリカ」というより「遅れている日本」を考えました。

利用者、ボランティア、出版関係者、一般とさまざまな立場の人が集まって中身の濃い何時間かを共有したことは大きな意義のあることと思いました。毎回主催のバリアフリー資料リソースセンター(BRC)の事務局の皆さまにはお世話になり、感謝しております。

(スタッフ同行 居谷)

No.82 「生きるということ−鎖の輪が広がる」

上記の題名で、全国盲学校弁論大会での弁論集がジアース教育新社から出されております。店頭には並んでおりません。お近くの書店で取り寄せてもらうか、インターネットから申し込むことができます。

この「藤田が行く」で何度かご紹介済みの元全国盲学校長会会長の皆川春雄先生が編集に携わっておられて、紹介して下さった本です。「ここに収録された弁論には、体験し、通過せざるを得なかったその人しか語り得ない言葉があります」と皆川先生が序に書かれています。

私は一気に読みました。途中、何度も涙が流れましたが、最後にはとてもさわやかな気持ちになりました。  「私も、また今日からがんばるぞ」と思いました。ある弁論の中で「自分が前向きにやっていれば、誰かがそれを見ていて、直接的には何もできないけど、誰かを勇気づけることができるんだなと思うようになった」とあります。正にその通りです。この本を一人でも多くの方に読んでいただだきたいと思います。ところで、今、著作権の許諾を得て音訳化に取り組んでいます。

当ネットワークのスタッフに元アナウンサー経験者で、黒一点の伊藤さんがいます。落ちついた深みのある声です。どうせならと文京盲学校の録音室をお借りして収録を始めました。備えつけの機材はソニーの1000Tなので、まず、テープ録音し、デイジー編集をすることにしました。同時校正をしています。私も久しぶりに収録現場に立ち会いました。編集は鶴岡さん。島村さんと泉さんにも同時校正してもらいます。(収録に3日間を予定しているため、当番を決めてあります。)これも正にネットワークです。完成しましたら全国の盲学校に寄贈する予定ですし、希望者があればお送りする予定です。また、詳細が決まりしだい、お知らせしたいと思っております。

No.81 ある真夜中のできごと

出ずっぱりの一日を終え、何も考える余裕のない頭で帰宅。とりあえず夕食の支度(これでも一応主婦です)。ようやくひと段落したのが10時過ぎ。届いていたFAXに気がつきました。2時過ぎの着信で、本日中の回答をとあります。正直「えーっ!なに、これ」と思いました。もうこんな時間だし、断ろうと思いました。いつものことですが、こんな時間になると頭も回りません。

大阪のあるリサーチ会社からです。官公庁の仕事のサポートとして今回世論調査の報告書を作成するにあたり、SPコード(音声読み上げコード)をつけて作成することになった旨、書き添えられています。そして、グラフが3枚添付されています。棒、円、帯グラフです。つまり、どう読んだらいいかということらしい。時間があれば読み原稿を作ることは可能。しかし、今の今、それは無理だと思いました。当ネットワークの事務局スタッフと分担してとも考えましたが、時間が時間です。あきらめました。しかし、無視というのも心が痛みます。連絡はつかないだろうと思いながら11時30分頃、電話をしてみました。つながりました。担当は若い男の人でした。こんな時間でも仕事をしているんだ。もしかしたら当方からの連絡を待っていたのかもしれません。

音訳者は見えない人の目の代わりなので、原則書かれていることは書かれているとおりに読むが、図表やグラフ、イラストや絵や写真には、毎回大変苦労していること。詳しく説明すればいいかというと逆にわかりにくいこともある。音訳ボランティアとは資格があるわけでもなく、ひとつひとつの事例にそったマニュアルがあるわけでもない。音訳者の感性や経験に負うところが大きいといった話をすると、感心しきり。現場の貴重な声が聞けて参考になりましたと言われました。

ここで思ったことは、事務局とはいえ、個人の自宅であること。一介の主婦であるということ。今現在、当方がどんな状況にあるかなど、先方にはわからないこと。「全国音訳ボランティアネットワーク」などという、大層な名前で、インターネット上で情報を公開している以上、来るものには、きちんと対応しなくてはならないという責任が生じていることを、しみじみ感じたできごとでした。それにしても、早く寝たいと家族に遠慮しいしい思ったことでした。

No.80 多摩地域公立図書館大会に参加して

2月13日(金)、今年もまた、都内西国分寺のいずみホールで多摩地域の公立図書館大会が開かれました。「求められるDAISY資料とは」のテーマのもと、DAISY TOYKOの森田聰子さんの講演と日野市立中央図書館の中山玲子さんの報告がありました。森田さんのお話は、すでにDAISY編集に携わっている音訳ボランティアの皆さんには、再確認という意味でよかったようです。まだ取り組みの進んでいない図書館職員の皆さんには大変わかりやすかったと思います。中山さんからは「DAISY編集基準、録音図書製作基準の全国統一の意義と進捗状況」の話がありました。

こちらには音訳ボランティアの代表として全国音訳ボランティアネットワークから、基準案作りの委員を出させていただいているので、ある感慨を持ってお話を伺っていました。参加者はDAISY編集者130人、図書館職員50人ということでした。ここでもたくさんの熱心な音訳ボランティアの皆さんにお会いしました。

(スタッフ同行 島村、大田)