音ボラネット事務局 のすべての投稿

No.84 マンガを読む

東京タワーの最寄りの駅は地下鉄の神谷町ですが、正にタワーの下あたりに霊友会法友文庫点字図書館(団体会員)があります。館長の川岸さんはじめ職員の皆さんは、いつも気さくに声をかけて下さり、「協力できることはやりますよ」と言って下さっていました。15年間もマンガ(雑誌の連載もの)を読んでいるということで、お話を聞かせていただこうと出向いたわけです。

担当は三浦さんという男の方です。実際のものを聴かせていただきました。セリフとナレーション、背景(絵)がありますがほとんどセリフとナレーションのみ、絵の説明はなし。以前は絵も読んでいたそうですが、ゴチャゴチャして、わかりにくいので止めたとか。スッキリしてわかりやすいと思いました。

利用者からのマンガの読みのニーズが増えていますが、指導して下さる方はいらっしゃるでしょうか。今後「マンガを読む」講座を開きたいと考えているところですが、マンガに関して何か情報をお持ちの方、教えてください。

No.83 「アクセシブルな電子本を届けよう!」

2月22日(日)、「アクセシブルな電子本を届けよう!—読書に障害のある読者が利用できるシステム構築をめざして」が開かれ、3題の講演がありました。(都内・日本教育会館)アメリカのジム・フラクターマンさん(ブックシェアプロジェクト代表)の話が一番興味をそそられました。

ブックシェアとは、会員制のウェブ図書館サービスで、入会金と年会費を払った読書障害者(うち、80%が視覚障害者)はウェブ図書館にアップされている電子本を自由にダウンロードし、自分にあった読書スタイルで読書をすることができます。ここの実績を評価したアメリカ政府は予算をつけて、教科書や教材の電子化を委託しているという話は「進んでいるアメリカ」というより「遅れている日本」を考えました。

利用者、ボランティア、出版関係者、一般とさまざまな立場の人が集まって中身の濃い何時間かを共有したことは大きな意義のあることと思いました。毎回主催のバリアフリー資料リソースセンター(BRC)の事務局の皆さまにはお世話になり、感謝しております。

(スタッフ同行 居谷)

No.82 「生きるということ−鎖の輪が広がる」

上記の題名で、全国盲学校弁論大会での弁論集がジアース教育新社から出されております。店頭には並んでおりません。お近くの書店で取り寄せてもらうか、インターネットから申し込むことができます。

この「藤田が行く」で何度かご紹介済みの元全国盲学校長会会長の皆川春雄先生が編集に携わっておられて、紹介して下さった本です。「ここに収録された弁論には、体験し、通過せざるを得なかったその人しか語り得ない言葉があります」と皆川先生が序に書かれています。

私は一気に読みました。途中、何度も涙が流れましたが、最後にはとてもさわやかな気持ちになりました。  「私も、また今日からがんばるぞ」と思いました。ある弁論の中で「自分が前向きにやっていれば、誰かがそれを見ていて、直接的には何もできないけど、誰かを勇気づけることができるんだなと思うようになった」とあります。正にその通りです。この本を一人でも多くの方に読んでいただだきたいと思います。ところで、今、著作権の許諾を得て音訳化に取り組んでいます。

当ネットワークのスタッフに元アナウンサー経験者で、黒一点の伊藤さんがいます。落ちついた深みのある声です。どうせならと文京盲学校の録音室をお借りして収録を始めました。備えつけの機材はソニーの1000Tなので、まず、テープ録音し、デイジー編集をすることにしました。同時校正をしています。私も久しぶりに収録現場に立ち会いました。編集は鶴岡さん。島村さんと泉さんにも同時校正してもらいます。(収録に3日間を予定しているため、当番を決めてあります。)これも正にネットワークです。完成しましたら全国の盲学校に寄贈する予定ですし、希望者があればお送りする予定です。また、詳細が決まりしだい、お知らせしたいと思っております。

No.81 ある真夜中のできごと

出ずっぱりの一日を終え、何も考える余裕のない頭で帰宅。とりあえず夕食の支度(これでも一応主婦です)。ようやくひと段落したのが10時過ぎ。届いていたFAXに気がつきました。2時過ぎの着信で、本日中の回答をとあります。正直「えーっ!なに、これ」と思いました。もうこんな時間だし、断ろうと思いました。いつものことですが、こんな時間になると頭も回りません。

大阪のあるリサーチ会社からです。官公庁の仕事のサポートとして今回世論調査の報告書を作成するにあたり、SPコード(音声読み上げコード)をつけて作成することになった旨、書き添えられています。そして、グラフが3枚添付されています。棒、円、帯グラフです。つまり、どう読んだらいいかということらしい。時間があれば読み原稿を作ることは可能。しかし、今の今、それは無理だと思いました。当ネットワークの事務局スタッフと分担してとも考えましたが、時間が時間です。あきらめました。しかし、無視というのも心が痛みます。連絡はつかないだろうと思いながら11時30分頃、電話をしてみました。つながりました。担当は若い男の人でした。こんな時間でも仕事をしているんだ。もしかしたら当方からの連絡を待っていたのかもしれません。

音訳者は見えない人の目の代わりなので、原則書かれていることは書かれているとおりに読むが、図表やグラフ、イラストや絵や写真には、毎回大変苦労していること。詳しく説明すればいいかというと逆にわかりにくいこともある。音訳ボランティアとは資格があるわけでもなく、ひとつひとつの事例にそったマニュアルがあるわけでもない。音訳者の感性や経験に負うところが大きいといった話をすると、感心しきり。現場の貴重な声が聞けて参考になりましたと言われました。

ここで思ったことは、事務局とはいえ、個人の自宅であること。一介の主婦であるということ。今現在、当方がどんな状況にあるかなど、先方にはわからないこと。「全国音訳ボランティアネットワーク」などという、大層な名前で、インターネット上で情報を公開している以上、来るものには、きちんと対応しなくてはならないという責任が生じていることを、しみじみ感じたできごとでした。それにしても、早く寝たいと家族に遠慮しいしい思ったことでした。

No.80 多摩地域公立図書館大会に参加して

2月13日(金)、今年もまた、都内西国分寺のいずみホールで多摩地域の公立図書館大会が開かれました。「求められるDAISY資料とは」のテーマのもと、DAISY TOYKOの森田聰子さんの講演と日野市立中央図書館の中山玲子さんの報告がありました。森田さんのお話は、すでにDAISY編集に携わっている音訳ボランティアの皆さんには、再確認という意味でよかったようです。まだ取り組みの進んでいない図書館職員の皆さんには大変わかりやすかったと思います。中山さんからは「DAISY編集基準、録音図書製作基準の全国統一の意義と進捗状況」の話がありました。

こちらには音訳ボランティアの代表として全国音訳ボランティアネットワークから、基準案作りの委員を出させていただいているので、ある感慨を持ってお話を伺っていました。参加者はDAISY編集者130人、図書館職員50人ということでした。ここでもたくさんの熱心な音訳ボランティアの皆さんにお会いしました。

(スタッフ同行 島村、大田)

No.79 「東音連」での講演を通して

2月10日(火)、東京音訳グループ連絡会(都内51グループ加入)で、前全国盲学校長会会長の皆川春雄先生をお招きして「出会いに生かされる」と題しての講演会が開かれました。

私が3年前に、全日本盲学校教育研究大会・鳥取大会で初めてお目にかかり、昨年の当音ボラネットの「医療関係の音訳を考える」シンポジウムにもご出席くださった方です。この時の先生の印象が強く、都内の参加者から、ぜひ一度まとまったお話を伺いたいという希望が出ておりました。講演会当日も、穏やかな語り口で、広い視野からのお話、特に視覚障害教育とボランティア、音訳ボランティアへの期待という後半のテーマは大変に有意義だったとの感想が聞かれました。

さて、終了後、元八王子盲学校の山田先生にお引き合わせいただきました。本年6月の全国音訳ボランティアネットワークの総会、2日目の分科会で「教育現場に役立つボランティア—子ども・学生支援—」(仮称)へのご協力をいただくためです。ここでも教育現場のこと、音訳ボランティアの今後など貴重なアドバイスをしていただきました。色々な方々と連携を強めていきたいと改めて感じたしだいです。

No.78 図書館音訳ボランティア教養講座

2月6日(金)ぬけるような青空の下、風もなく東京より暖かい静岡市の市立中央図書館に伺いました。図書館音訳ボランティア教養講座で話をさせていただくためです。ありがたいことにあちこちでお話をする場を与えていただいていますが、公共図書館でというのは初めてです。図書館側からみれば「全国音訳ボランティアネットワークってなあに」、「代表の藤田って、どんな人、どんな話をするの」という程度のものだろうと思います。

新参者ではありますが、色んな所へ出向き、音訳ボランティアはもちろんのこと、利用者、関連諸団体等の方々とお会いし、生の声・現場の声を聴かせていただいております。たて割りではなく、横のつながり、つまり、連携・協力の大切さをぜひ一人でも多くの皆さんに再確認していただきたい。利用者視点に立った活動を訴えたいのです。

地元ひびきの会の稲垣さんはじめ役員の皆さんの熱意と、こころよく受け入れて下さった館長さん、担当の職員の方のおかげです。私たちの積み上げてきたものが、受け入れられる時期がきているんだなと感じました。今回は今まで以上に喜びと意欲が大きいと感じました。

No.77 「バロックフルート」初体験

No.77(2/5) 「バロックフルート」初体験

2月3日(火)、職場から直行の岩本謙一さんと都内市ヶ谷の駅で待ち合わせて、アルカディア市ヶ谷に向かいました。6月4日(木)の全国音訳ボランティアネットワークの総会終了後に、会場のみなさんの肩をほぐすためにも利用者の演奏を予定しています。昨年から人選をしておりました。あちこち顔を出しているとおかげさまで色んな人とのご縁が生まれます。そんなお一人が千葉の藤井さんです。ガイドヘルパーをなさっていますが、ご自身のことを「盲導人」とおっしゃるユニークかつ熱心な方です。

この藤井さんが紹介して下さったのが岩本さんでした。そもそもバロックフルートとはバッハの時代のもので木管楽器です。サロンや教会でチェンバロなどと一緒に演奏されていたそうです。岩本さんは趣味でフルートを吹いていらしたそうですが、ある時、耳にしたバロックフルートの音色に魅せられ、今に至っているとのことです。

会社勤めなので、なかなか練習時間がとれないのが悩みとおっしゃっていました。また、アルカディア市ヶ谷のような広い場所で、しかも大人数の前で演奏したことがないとかなり不安がっていました。しかし、会場の広さを体感し音を出してみて、少しホッとなさったようです。これなら大丈夫だと思いました。マイクなしでもいけるくらいの大きな音です。

総会に向けて確実に決めていかなければならないことが次から次へを出てきます。皆さんが参加してよかったと思える会にすべくスタッフ一同がんばっていますので、一人でも多くの方に参加していただきたいと思います。(案内及び参加申し込みは3月中旬発行の会報・音ボラネット通信に同封)

(スタッフ同行・三浦)

No.76 みんなで協力を

1月24日(土)都内お茶の水にある東京YWCAで「音訳の未来を考える」とのテーマのもとに、お話させていただきました。音訳ボランティア活動やそれに伴う養成講座など30年前から、活発な活動を続けてこられた所です。皆さんのところでもこちらの修了生が活躍しているかもしれません。

12グループに分かれ雑誌制作を行っています。まだすべてテープ録音とのこと。「デイジーへの移行を検討しているが、グループ数が多く、足並みがそろわない」と悩んでいました。「理想は足並みそろえてかもしれないが1人でも2人でも興味ある人が、まず始めてみたら」とアドバイスしました。それぞれのグループの特徴をよくよく踏まえみんなが喜んで活動できることが一番です。

役割分担というか分業でかまわないといった私の話に皆さん、ホッとした様子でした。職員の木村さんのご説明では、国の公益法人制度の改革に伴う動きや財政難の中、歴史あるYWCAが大きな過渡期を迎えているということでした。こちらでもやはり昨今の社会状況とは無縁ではないようです。こんな時だからこそお互い知恵を出し合い、なるべく録音物の重複化をさけ、協力し合って乗りきっていきたいと思いました。

No.75 音訳者いらない?

1月23日(金)、日本教育会館(千代田区)で「出版社のための出版UDセミナー」の最終回が開かれました。千葉県立中央図書館の松井進さん、筑波大付属視覚特別支援学校の宇野和博先生、東大先端技術研究センターの近藤武夫先生、日立コンサルティングの岡山将也さんのお話がありました。

それぞれに興味深い内容でしたが、松井さんの「ここまで進化した合成音声とオーディオブックの環境」は特に音訳者として耳をそばだてるものでした。「合成音声」というと聞きづらい、誤読が多いというイメージが強かったのですが、ずいぶんなめらかに聞きやすくなり、女性の声と男性の声を選ぶこともできます。より肉声に近くなったという印象を受けました。また、誤読については、誤読の少ない日立やペンタックスの音声エンジンの開発により大きく進化しているようです。

合成音声による録音図書製作の最大のメリットは作成時間の短縮、肉声で読むよりは早いということです。こう書いてくると「それでは今後、音訳者は必要ないのでしょうか」と言う人が必ずいます。が、そんなことはありません。よくぞ、こんなテープを聴いて下さってというものがなきにしもあらずですから、利用者が様々なツールの中から選べる環境が整いつつあるということは喜ぶべきことです。利用者によって、また、原本によって「肉声がいい」という場合だってありますから、悲観せずに頑張りましょう。