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No.359 大阪訪問

出版UD研究会のMLから、興味のそそられる案内が届きました。近畿視情協(近畿視覚障害者情報サービス研究協議会)図書館サービス委員会が主催する研修会開催の案内です。
会場が大阪の日本ライトハウス情報文化センターだということも参加の決め手となりました。

近畿視情協は近畿地区の点字図書館と公共図書館からなっていて、情報交換や相互協力を行っています。
「公共図書館との更なる連携を求めて」ということで、京都ライトハウス情報ステーションの田中所長のお話、特に公共図書館へのアンケート(点字図書館と公共図書館の連携を考えるためのもの)結果を興味深く伺いました。

お互いの立場や役割の違いを理解しながら、連携を深めて行くことはますます重要になってくるでしょう。残念ながら関東では、こういう取り組みは聞いたことがありません。どこかがリーダーシップをとり、近畿視情協のような取り組みが生まれるといいです。そこには、音訳ボランティアも気軽に参加できるようなものになるとすばらしいと思います。

どこの世界でも連携が第一です。
特にこの世界、目的は同じですから。

さてこの度は、お恥ずかしながらそして、遅ればせながらの日本ライトハウスデビューでありました。研修会では、各図書館のみなさんの熱心なお話を伺えて、大変勉強になったことは言うまでもありません。
その上、またまたたくさんの出会いに恵まれました。一番は、デイジー枚方の小林さんとの再会です。早い時期からテキスト化に取り組み、テキストデイジーの製作をしているとのこと。相変わらず精力的に頑張っています。刺激を受けました。
また、都内での「マラケシュ条約」の研修会で初めてお目にかかって、地元大阪で2回目のご対面となった、ロービジョン関係のことに詳しい堀さん。ご飯を食べながら、いろいろ教えていただきました。
更に昨年からお世話になっている日盲連の大橋さん率いる研修会メンバーと大阪で再会にはビックリ。

また竹下館長には、ご多用中にも関わらず館内を案内していただきました。
何人かの方には、お久しぶりと言っていただきましたが、みなさんとは、大阪以外でお目にかかっていたということです。

ところで、日頃関西の会員は、何か呼び掛けても反応がイマイチと感じることがありましたが、みなさんには、日本ライトハウスの存在が大きいということを、今更ながら感じました。
音訳ボランティアを大切にしてくださっている様子も垣間見られました。ボランティアのみなさんも頼りにしています。いい関係ではないでしょうか。

さて改めて感じたことです。出向かなければわからないことや出会わない人・事柄があるということです。今年もまた、出会いを求め、連携を更に深めるために、あちこち出かけたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
大阪でお世話になりましたみなさまありがとうございました。

またいつかどこかでお目にかかりましょう。

No.358 カラーユニバーサルデザイン

世の中には、さまざまな障害があります。そして第三者からは、なかなか理解されにくい障害があるように思います。

今年初の出版UD研究会は、「編集者・デザイナーが知っておきたいカラーユニバーサルデザインの基礎知識」をテーマに、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構の三人から発表がありました。三人とも色覚障害の当事者です。

今さらですが、ここで復習です。

ユニバーサルデザイン(UD)とは、「年齢や障害の有無などにかかわらずすべての人が、快適で安全に暮らせるように街づくりや物づくり、サービスなどにあらかじめ配慮する」考え方です。

そして色の見え方の多様性に配慮したのがカラーUDです。

まず色弱と言われる人は、男性に多く、日本では男性の20人に1人、女性は500人に1人の割合だそうです。

そういえば昔、小学校で色覚異常の検査が実施されていました。石原表というそうです。正常者が、色の差が大きく違って見える2つの色(赤と緑とか)が、色覚異常者には、色の違いが小さく感じられ判別が困難になることがあります。

擬似体験レンズが配布され、みんなで見えにくさを体験しました。

ワークショップでは、お隣の方が当事者で具体的に困っていることを話してくれました。例えば、手帳の日付の数字は、たいてい平日が黒、日曜・祭日は赤で表示されています。が、みんな同じ黒に見えるとか、洋服はすべて、黒か白か青しか買わないとか、外見からわからないぶん、ひそかにご苦労なさっているのだなあと思いました。

差別化するためにか、地図や各種申込書や教科書など、ずいぶんカラフルになっていて、パッと見てわかるようになっています。

しかしそのことが逆に、色弱のみなさんには、わかりづらく、正しい情報が伝わらないということが多々あります。

案内図などさまざまな分野で色を見分けにくい人にも、情報が伝わるようにしないといけないということを実感しました。

デザイン性とかこだわりとかもあるので、簡単には変えられないだろうなあと思いましたが、色の選び方や組合せ、縁取りをするとか工夫しだいで美しいものができるんだということも実例をあげて見せていただきました。
企業などの取り組みもだいぶ変わってきているようです。

まずは、こういう見え方があるということを多くの人が理解することが大切。そしてそれぞれが主張するだけではなく、少しずつでも歩みよることの大切さを学びました。

これは、いつでもどこでも感じることでもあります。

No.344 出版UD研究会

46回目となる出版UD研究会が、西早稲田の日本盲人福祉センターで開かれました。 「特別な支援を必要とする子どもたちの読書環境について考える」をテーマに、専修大学の野口先生と伊藤忠記念財団の矢部さんから、プレゼンがありました。
野口先生からは、50年ぶりに実施された特別支援学校図書館の現状に対する調査アンケートの中間報告です。そして矢部さんからは、障害のある子どもたちのための読書支援事業「わいわい文庫」~マルチメディアDAISY図書~について。

さて、1校に幼稚部から高等部専攻科まである特別支援学校の図書館の現状は、普通校に比べると、年間予算、司書教諭の配置率等々、非常に低いことに驚ろかされます。 多様な障害にきめ細やかな対応が必要なことを、行政がもっと想像力を働かせてほしいと思います。

また、マルチメディアDAISY図書がさまざまな障害のある子どもたちに有効だということを現場の先生、保護者はもちろんのこと多くの人に知ってもらいたいと思います。 私たち音訳者も、まずは知ること、そして何ができるのかを考えることが大切ではないでしょうか。

ところでここでまた、(有)サイパックのマルチメディアDAISY図書再生ソフト、ボイスオブデイジー。シナノケンシ(株)のマルチメディアDAISYやテキストDAISYの製作ソフト、プロデューサーの貴重なデモもありました。日々進化の世界です。

今回は音ボラネット副代表の鶴岡、中山顧問弁護士、日頃お世話になっている畠山さんも参加。輪が広がることは嬉しいことです。活発かつ専門的な質疑応答もありました。

さて、いつも思うことですが、全国組織とはいえ、私たちのような弱小な団体は、より効率のよい活動を行っていくためにも、連携・協力が欠かせません。
でもこういう時代ですから、大なり小なりどこも同じだと思います。 予算が減らされ高齢化が進むなか、もう少し軽やかに連携・協力ができないものでしょうか。

結局のところ、何事も人とお金?でしょうか。
金木犀の香る夜道を歩きながら、単純頭で考えました。

No.333 出版UD研究会

44回目となるこの度の出版UD研究会は、「外国とつながりのある人が求める読書・情報サポートを考える」でした。プレゼンターは、神奈川県立地球市民かながわプラザ  あーすぷらざの外国人教育相談コーディネーター加藤佳代さんです。会場は、お馴染みの専修大学神田キャンパス。今までにない珍しいテーマです。いつになく若手の新しい人たちの参加が目立ちました。

日本で暮らす外国人保護者や子どもたちの現状、ニーズや課題。それに対する学校や図書館での対応等、伺いました。国内での外国籍の人の数は、ここ20年で2倍以上になっているそうです。日本語を母語としない人たちにとって、果たして日本は暮らしやすい国なのでしょうか。自分が逆の立場だったらと、いろいろ考えさせられました。

神奈川県のようにサポート体制が充実していればいいでしょうが、それでも課題はあるようです。情報弱者という点からすると、障害者と同じかもしれないと思いました。

日本語が理解できないために、必要な情報が得られなかったり、文化や生活習慣の違いになじめず、孤立してしまう人がいなくなるように、それぞれの地域でも、何か身近なところでお手伝いできないものでしょうか。

いつものことながら、学びと出会いの場でした。

No.327 合理的配慮

出版UD研究会の「特別な支援を必要とする子ども・学生の立場から合理的配慮のあり方を考える」に参加しました。

東京大学先端科学技術研究センターの近藤先生が、プレゼンターです。先生は、障害のある子どもたちの学習や生活の支援を通して、大学や学校における「合理的配慮」を実現するための研究実践を続けています。障害のある高校生や大学生の例が示されました。

実にさまざまな個別のニーズがあることを再確認しました。
まずは、勉強の方法がわからない。例えば「読めない」というのは、書かれているもの、印刷物などが読めないだけ。「書けない」というのは、紙とペンでは書けないということであり、ワープロだったら書けるということです。
音声読み上げで勉強し、成績が上がり受験したいという意欲がわいて、合格できた。
手書きの文書では、合格できなかった。

このように、自分なりの学びの方法を見つけていくようになると、勉強が進むということだとおっしゃっていました。高等教育へ進学し、配慮を得て学んでいる障害学生の数は、アメリカ等と比べると、非常に少ない現状のようです。

2006年に採択された国連障害者権利条約が、日本でもようやく本年1月に批准されました。このなかに、合理的配慮という概念が盛り込まれています。障害のある人への差別的取り扱いを禁止、合理的配慮の提供を義務付けるという動きが生まれました。こういうなかで、障害のある子どもたちの学びを支えるためには、私たちは、何ができるのかを考える機会となりました。
また熱心なみなさんに再会できて、嬉しいかぎり、私自身の励みにもなりました。
そして、飯田橋から東京しごとセンターの行き帰り、にわかガイドをしました。何事も勉強です。