見えない世界を見る~瞽女の魅力と広瀬浩二郎の仕事~という催しが、両国門天ホールで開かれました。
お馴染みの全盲の文化人類学者・広瀬浩二郎(国立民族博物館准教授)さんのお話はもちろんですが、「瞽女の魅力」というフレーズに惹かれてでかけました。
ここで初めて、瞽女唄を聴きました。
私が生まれ育った新潟県黒川村(現 胎内市)には、養護盲老人ホーム「胎内やすらぎの家」があります。
ここは「最後の瞽女」と呼ばれ、無形文化財保持者・小林ハルさんが77歳から亡くなる105歳まで過ごした所です。
ここに通って直接、ハルさんから瞽女唄を伝授されたのが、萱森直子さんでした。
萱森さんは、点訳ボランティアとして、ご自分たちが作った点訳本がどんなふうに使われているのか、仲間と出掛けたのが、「胎内やすらぎの家」でした。
そこで、慰問者に対してお礼にとハルさんが唄った瞽女唄にその夜、眠られないほどの強い印象を受けたそうです。圧倒的な存在感が押し寄せる感じだったとか。
やがて、ハルさんの元に新潟市内から何度も通い、瞽女唄を伝授されるわけです。
萱森さんは、唄う前にこう言われました。
「私は健常者であり、瞽女ではない。瞽女唄を直接ハルさんの指導を受けた伝承者として、唄いかたの技術を伝えるものではない。瞽女として生きたハルさんの心と思いを伝えようとしている」と。
萱森さんの演奏の感想は、感動と言うよりも、衝撃を受けたというのが、正直なところです。
かつて瞽女さんたちが歩いた越後の風土、そして彼女たちの精神性を見事に再現しています。
今回ここで萱森さんと対談なさったのは、川野楠己さん。元NHKチーフディレクターであり、ラジオ番組「盲人の時間」を長年担当。
瞽女や琵琶盲僧の検証と、顕彰をする組織を立ち上げ、CDを製作、多くの著作もあります。
会場で私は、川野楠己著、(有)鉱脈社発行「瞽女 キクイとハル」(本体2,000円)を買い求め、即読了。
高田瞽女の杉本キクイさんと長岡瞽女の小林ハルさんが、視覚障害を持ちながら厳しい修行を続け、芸の世界に生きてきた足跡をたどります。
興味ある方は、ぜひお読みください。
こうして川野さんや萱森さんたちのおかげで長年、視覚障害者が担ってきた文化の伝統が断たれることなく伝えられているのだと強く思いました。
また機会がありましたら、足を運びたいと思います。