2013年6月、国連の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)は「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のあるものが発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」を採択。
日本でも条約の批准に向け、国会で著作権法改正案の審議が始まろうとしています。
日盲連、DPI日本会議、全国盲ろう者協会、そして弱視者問題研究会の4団体は、マラケシュ条約批准時に著作権法を改正するだけではなく、読書障害者の読書環境を総合的に整備するための「読書バリアフリー法」の制定を求めて運動しています。
私たち音ボラネットとしても、著作権法改正に向けては、文化庁への陳情、パブリックコメントの提出等を行ってきました。
ですので、日本盲人福祉センターで開かれたセミナーには、多大な関心を持って参加しました。
弱視者問題研究会の宇野和博先生からは、「マラケシュ条約と著作権法、読書バリアフリー法」について。
枚方市立中央図書館の服部敦司さんは、「視覚障害者の立場から読書バリアフリー法に期待すること」を話されました。
宇野先生が音訳ボランティアの高齢化等にふれ、テキスト作成ボランティアを提案。
「プレーンテキストを作る。きれいなテキストデータをベースにしてさまざまな媒体を保証していかなければならない」と。とても興味深く伺いました。
また「サピエ図書館」と「国立国会図書館」の話も。
データが二元的に管理されているより、一元化されたほうがいいにきまっています。が、これがなかなか難しい。
大学図書館、学校図書館、公共図書館、点字図書館、更には社協や地域ボランティアの製作したものが、国会図書館の下に集められることが理想だと思うのです。
ところで、NPO法人自立生活センター「くれぱす」の見方信子さんの意見発表に、当事者の声が何より、人の心を動かすと感じました。この方は、「耳と目はOK。口も動かせるので話せる。でも身体障害なので24時間介護が必要。手が動かないのでページをめくれない。めくってとか、次のページとか介護者に言うのは違和感があり、気を使うのに疲れた。電子化されたものは読めるようになったが、ノベルや最新本などは読めない。時間差でしか読めない。健常者や晴眼者と同じタイミングでというのは難しい。自分の読みたい時に読めることが大事」と。
全国盲ろう者協会の川島朋亮さんからは、「全く見えない、全く聞こえない全盲ろう者は点字が使える。でも点字離れが増えている。しかし、点字が必要な人もいて、一人ひとりのコミュニケーション方法が違っている」と。
全ての障害者がいつでも読みたい本を自分にあった媒体で買ったり、借りられるようになることを目指し、「読書バリアフリー法」の制定を求めていかなければなりません。
もちろん出版社にも合理的配慮を求めながら、関係する全ての団体、個人が協力、連携をしなければなりません。
私たちも音訳だけに専念していればいい、という時代ではないのではと思います。