No.453 著作権法の改正

専修大学神田キャンパスの大学院棟で、日本出版学会・出版アクセシビリティ研究部が主催の講演会がありました。

筑波大学附属視覚特別支援学校の宇野和博先生から「マラケシュ条約の批准と著作権法改正、そして真の読書バリアフリーを目指して」ー北風か太陽か、いやWinWinでしょーという、示唆に富んだお話がありました。

ここでは、特に私たちに関係する著作権法改正について、報告しておきます。

2018年4月25日、参議院本会議において、「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の締結案が、全会一致で承認されました。

また、5月18日、国内法整備として著作権法が改正されています。

先生は冒頭、「結論は一つ、読書障害者にも出版社にも著者にも利がある、Win Winの関係を確立すること」とおっしゃっていました。

さて、マラケシュ条約とは、世界中の読書に困難のある障害者の読書環境を整備していくことを目的としています。

受益者は視覚障害者、読み書きに困難のある発達障害者、寝たきりや上肢障害のため本が持てなかったりページがめくれない身体障害者、左右の目の焦点が合わせられないなどの眼球使用困難者と定義されています。

世界盲人連合によれば、障害者が読書可能な本の数は、発展途上国で1%未満、先進国で7%と推計。
我が国の現状はというと、国立国会図書館には、1千万タイトル以上の本が納本されているにもかかわらず、国内のアクセシブルな図書数はサピエと国会図書館を合わせても点字が約19万タイトル、録音が9万タイトル、その他の媒体は1万タイトルにも満たないわけです。
文芸書が多く、専門書や児童書が少ないという内訳になっています。

37条3項による複製等を行える主体を拡大することを目的とした制令が改正されれば、地域ボランティアや社会福祉協議会や障害者団体も著作権許諾の問題に悩まされることなく、音訳、拡大、電子化などに取り組めるようになるということで、今まで待ちに待った朗報というべきものです。

しかし、ここで見逃してはならないのは、足かせがなくなり製作できるようになり、せっせとアクセシブルなデイジー図書を作ったとしても、全国の利用者に活用される道はあるのかということです。

お金がかかるので、ボランティアグループはなかなかサピエには、入れません。
絶対的に足りていないデイジー図書を少しでも増やすためにも、死蔵などあってはならないと思うのですが…。

国会図書館の間口をぜひとも広げて、ボランティアが作ったものも入れていただきたいと切にお願いするものです。

私たちだけではどうしようもないことは、当事者の皆さんや関係の皆さんと、連携協力しあって、運動していかなくてはなりません。
そのためにも、音訳ボランティアも今以上に著作権のことを勉強していかなくてはなりません。

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