鎌倉にある出版社、銀の鈴社に、伊藤忠記念財団の矢部さんを、ご案内しました。この銀の鈴社は、長野の丸田さんが「はこちゃんのおひなさま」という絵本を出しているところです。そのご縁で、以前に伺ったことがありました。
古民家の入り口を入ると、ギャラリーになっています。
更に奥の方に、事務所とサロンがあります。サロンの壁ぎわには、背の高い本棚があって、素敵な絵本や詩集、野の花の絵はがきなどが並んでいます。一冊一冊、手にとって眺めていると、時のたつのも忘れそうです。
さて矢部さんたちは、私たちが提供した音源をもとに、マルチメディアDAISY図書を製作しています。そして、視覚障害にかぎらず、さまざまな障害のある子どもたちに、喜んでもらえる絵本や物語を届けたいと、特別支援学校や図書館に寄贈しています。財団自体が、文化庁指定の団体として認可されているので、著作権フリーなわけですが、丁寧に、各出版社を回って、理解の輪を広げようとしています。このことについて私は、色んな考えのあることも承知していますが、さまざまなな立場、やり方があるというふうに、理解しています。
すでに、階成社、角川学芸出版、福音館、小峰書店、東京子ども図書館等の作品を製作していますが、もっと広くたくさんの出版社のものを集めたいという希望です。大手になると、いつ行っても、担当者に会えないこともあるそうです。30分も話を聞いてもらえれば、いいほうだとも。
そんななか、「はこちゃんのおひなさま」つながりで、西野社長に、矢部さんをご紹介したというしだいです。作者も、読み手も共に大切にしているという姿勢に共感しました。気付くと2時間もたっていました。ぜひ、協力したいと言っていただき、私もほっとしました。矢部さんの「出版業というよりも、本屋さんという、地に足が着いた気高い魂を感じ、勇気づけられました」という言葉、言い得て妙、だと思いました。
ところで、紹介していただいた本の中で、視覚障害の元国語教師、小泉周二さんの詩集「太陽へ」そして、宮城県名取市の「方言を語り残そう会」の「大震災五七五の句集負げねっちゃ」が、心に残りました。一人でも多くの人に読んでほしい二冊です。
特にこの「負げねっちゃ」は、ポケットサイズの「手のひらBooks」です。銀の鈴社の2012年からの取り組みとしてスタートしたものです。大震災でのありのままの気持ちと心の叫びを、形に残したいと、名取市のみなさんが、方言をそのままに心情を表現した句集です。この句集については、東京の私たちではなく、地元のできれば名取市の人に、ぜひ音訳してもらいたいと、準備を進めています。
新しい出会いから、また何かが生まれたら、本当に幸いです。